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  神剣家の正月

「新年明けましておめでとう御座います、本年も幸多き事お祈り申し上げます候。」
「しょっぱなから言う事古いぞお前は。」
『でもおめでとう御座いまーす』
 ちゃぶ台を囲って男だらけの神剣家はお互いに挨拶を交わす。
 その中央には橙の乗った鏡餅一つ。
 それを取り囲むようにおせち料理と雑煮が並べられている。
「さて、新年の挨拶も終わった事で……」
 長男・蒼伊、父・市射、祖父・麹はジロリと次男なのに大黒柱(その上養子)・析羅の方に顔を向ける。
『お年玉をお願いします。』
「よし、お前等いっぺん歯ぁ食い縛れ!」
 土下座して頼む大人3人を見て析羅は容赦なしに右手に拳を作った。
「何でだよ新年の楽しみっつったらコレだろ!? ソレ奪うって何様よお前!!」
「何処の世界に年下にお年玉ねだる大人がいる!!」
『此処にいる!!』
「3人揃って断言するなダメ大人ーズッ!!!」
 三男・志爛は毎年行われるこの光景を、おせち料理に砂糖を振って食べながら傍観していた。
「第一、お年玉なら毎年やってるだろう! 何が不満だ言って見やがれ!!」
『違う! あんな鏡餅切り分けて焼いて食べるアレはお年玉とはいえない!!』
「それが本来のお年玉じゃボケェ!!!」
 4人の口論に志爛は、我関せずとばかりに雑煮を食べていた。
「……平和ですねぇ…。」


  鉄家の正月

「新年明けましておめでとう御座います。」
「こちらこそ。」
「今年も渚さんにとって良いお年になるよう、お祈り申し上げます。」
「こちらこそ、社雷君にとって良い年になるようお祈りいたします。」
 相も変わらず社雷と渚は向かい合う事無く新年の挨拶をした。
 テーブルには二人でも少々余る量のおせち料理。
「ハイ、社雷君。」
「…?」
 渚から手渡されたものは小さなポチ袋。
 亥年なのに犬の写真がついたポチ袋。
 とりあえず中身は何となく察せた。
「……………。」
社雷は渚とポチ袋を交互に見て
「有り難く返上させていただきます。」
「即答なのね。」


  未恩での正月

「お年玉?」
 スコールは訝しげな表情で4人の話を聞いていた。
「あぁ、日本には『お年玉』って言う風習があって 元は鏡餅を砕いたものを与えるって奴だったんだが、今じゃ大人が子供にお金をあげるって言う感じのものになったんだよ。」
「ふぅ――ん…。 で?それを何で俺に言うんだ?」
 スコールの問いにシルクは笑む。
「そういうわけだからお年玉寄越しなさいよ。」
「言う人間を先ず間違えてるだろお前。」
 シルクの要求に拳は軽く叩いてツッコミを入れる。
 スコールは一層訝しげな表情をする。
「さっきの話が本当なら、何で成人が成人に金やらなきゃいけねぇんだ?」
 その言葉に4人は固まる。
「…え?」
「成人…?」
「私達が、ですか…?」
「国の規則によって結婚できる年は違うけど、未恩じゃ基本物心ついたら成人扱いだぜ?」
「だから見た目こんなのでも働いてんだよ。」とスコールは自分を指差して付け加える。
「ま、詰まる話 そのお年玉って奴はナシだな。」